米国は、3月末には総額2兆2000億ドル(約236兆円)という史上最大規模の救済措置をスピード成立させた。個人向けの現金給付や失業給付の拡充などで、当面の国民生活を支えるスキームだった。ところが、あまりにも急激な失業者増と政府の旧式なコンピューターシステムのせいで、こうした救済給付は困窮する国民や事業主の手に順調に渡されたとはとても言えない状況になっている。5月中旬までの2カ月で3860万人が失業した米国。失業給付の申請さえままならないドタバタぶりは、漏れ聞こえてくる日本の現金給付の混乱とも重なる。現状を報告する。(テキサス在住、ジャーナリスト=片瀬ケイ)
▽スムーズに進むかに見えた支給
日本では一律10万円の現金給付が実施されているが、CARES法と略される米国の「コロナウイルス支援・救済・経済安全保障法」にも、個人向け救済給付金が盛り込まれている。支給額は、世帯収入が年間15万ドル(約1600万円)以下の成人には一人当たり1200ドル(約12・8万円)、17歳以下の子供には500ドル(約5・3万円)。所得上限を超える人には、減額支給される。
休業や失業で収入が滞り、早急に資金が必要な国民も多数いる。連邦政府は4月中旬からの支給開始をめざし、連邦歳入庁も早々に個人が救済金支払い状況をチェックしたり、支払い方法を指定したりできるウェブページを設置した。
米国民には、日本のマイナンバーに相当する社会保障番号が付与されている。一定以上の収入がある人は雇用形態にかかわらず、連邦歳入庁への所得税申告が義務づけられている。このため連邦歳入庁でほとんどの国民の住所や家族形態、所得税を還付する際の銀行口座情報も把握しており、支給はスムーズに進むかに見えた。
▽60年前のプログラムで対応
4月下旬には給付金が振り込まれたという人もいたが、大多数はウェブサイトで状況確認しようにも、エラーメッセージばかりだった。ハイテクを誇る米国のはずが、連邦歳入庁や各州政府のコンピューターシステムは、長年アップデートされておらず、60年前のプログラム言語「COBOL」を使ったメインフレーム。あちらこちらで問題が起こるたびに、COBOL言語スキルを持つ往年のプログラマーを探す騒ぎとなった。
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Source : 国内 – Yahoo!ニュース